嘘カノ生活

あたしはベッドの横にあったパイプ椅子に座る。


目の前にいる間宮さんのその姿に、熱い感情が込み上げる。

本当に、久しぶりだ。

昨日はあんな事があったから、こんなにもまじまじと見る事は出来なくて。

吐き出し方も知らない熱い感情。

それが募っていった。
 
 
 
「…間宮さん」



起こさない程度に名前を呼ぶ。

ただそこに、間宮さんが居る。

手を伸ばせば届く程の距離。

そう思うと、無性に名前を呼びたくなった。
 
 
 
間宮さん、間宮さん、間宮さん。

同じ様に心の中でもそう呼んだ。 
 

医師によると、もう本当に大丈夫なようで。

あとは傷口が閉じて、リハビリをしたら退院できると聞いた。

 
 
「…壮」
 
 
 
あたしは嬉しさのあまり、壮、と呼んで手を伸ばす。

3ヶ月ぶりに触れる間宮さん。

気づかれないように頬に触れてから、手を軽く握った。