嘘カノ生活


「その人から、朝未ちゃんを守ったんでしょ?壮は」

「まあ狙われたのは確かにあたしで、それを間宮さんは助けてくれました。でもそんなの、あたしじゃなくたって…」



あたしがそう言うと、俊介くんは数秒黙ってから口を開いた。



「言い方すごい悪いけど、壮は昔っからひどいやつでさー。興味ないものとか、好きなもの以外はどうなったって良い風だったよ」

 

そして少しだらしない座り方のまま、「ほんと冷めた奴でさ」と苦笑した。
 

それを聞いて、あたしの心は弾み始めた。

喜んで良いことなのかはよくわからなかったけれど。


間宮さんは、あたしを"好き"だから、"興味ないもの"なんかじゃないから、だから守ってくれた。

そう自惚れても良いのだろうか。

 
 
 
「俺はまだ信じてないよ。壮が朝未ちゃんのこと嫌いになったり、とか。つうか、そうじゃないと困る」

「困る…?」

「だって多分この先あいつ、朝未ちゃん抜きじゃ生きてけないと思うんだよね」

「…なんですかそれ」

「ま、とにかく。支えてやってよ」
 
 
 
今度は苦笑いではなくて、柔らかい微笑みだった。

 

「はい」



なんとなく論点はずれたような気もするけれど、それでも少し、心が晴れたような気がする。

 
 

「ありがとうございます」

「ん。ちゃんと話聞いてやってよ。俺も知らないことだろうし」

 
 
あたしが笑うと俊介くんも笑って頷いて、コーヒーを一気に飲み干した。

そしてその缶を持ったまま立ち上がり、近くのゴミ箱にそれを捨てて時計に目をやった。