あたしは視線を間宮さんに戻して、傷を見た。

ナイフは刺さったままで、未だ生えるように背中に在る。
 
きっと下手に抜いてしまえば余計な器官も傷つけると思って、そのままにしておく。


涙は止まっていないけれど、やるべき事をしなくちゃいけない。

だってこのままいたら、最悪の事態が待っているだけだ。


そう考えて、ポケットから携帯を取り出して119に電話をした。

 
 
その後、あたしはバッグからタオルを取り出して、ナイフの柄に触らないようにそれで押さえる。

 
 
「あたし、間宮さんがいないとダメなんです。だから…っ、頑張ってください」 



あたしは喋ることをやめず、間宮さんに話し掛け続けた。

間宮さんはそれには答えないけれど、その代わり息はしっかり続いている。


 
間宮さん、頑張ってください。

死ぬかよ、って言いましたよね?

絶対、絶対です。

絶対にです。

 
 
心の中でそう願い続けて、必死に処置をする。

時折涙を腕で拭いた。


そして5分ほど立ったとき聞こえたサイレンの音。

それはマンションの前で停止し、救急隊員である男の人たちが数人でてきた。

間宮さんの傷口付近をタオルで押さえながら、ほっと胸をな撫で下ろす。
 
 
 
もうきっと、大丈夫だと。