「言わないっていうか、言えないって言うか」 「なに?」 「詳しいこと、知らないんだ。俺も」 意外な返答に、夕菜は首をかしげる。 それはあたしも同じ。 俊介くんにさえ、話していない事。 よっぽど、言えない事だったんだろうか。 「ただ、思い当たるのが、あれかなあ」 「何かあるんですか?」 あたしも我慢できなくなって、口を挟む。 けれど俊介くんの言葉は、あたしが知っていた1つの事実と、大きく違っていた。 「あいつ、兄ちゃん亡くしてるんだよ、高1の時」