どうしてこんなに想ってくれているのに、あたしは関谷を好きになれないんだろう。
間宮さんばかり思い出すんだろう。
身体が離れてやっと見えた関谷の顔。
泣いて、いた。
声を出すでもなく、まして泣きじゃくるでもなく。
ただの水が流れ落ちているんじゃないかと思うくらいの静かな涙。
関谷の泣き顔を見るのは初めてで、すごく戸惑った。
だけどそれを表に出しちゃいけない、あたしまで泣いたらいけない。
そう思って、続けた。
「…こんな最低なあたしより、もっと素敵な人いると思うから」
がたがたに震える声で。
もう、"ごめん"とは言わなかった。
言えなかった。
「…本当に、ありがとう」
だから代わりにありがとうと、それだけ言った。
関谷はやっぱり何も言わなくて、少しの間沈黙が続く。
怒っているだろうか。
"ふざけんな"だとか
"甘えたくせに"だとか
"自分勝手すぎる"だとか。
…でもそれでも仕方ないと思う。
本当のことなんだから。
滅茶苦茶に言われることを覚悟していると、関谷は急に口を開いた。
「…そっか」

