怖かった、怖かった。
あたしがそう言わずとも、涙がそれを物語っていて。
もう関谷の薄いグレーのセーターは、あたしの涙でその部分だけ色が濃くなっていた。
だけどそんなのお構いなしで、関谷はあたしを離そうとしない。
「辛かったよな。もう大丈夫だから」
もう1度頭を撫でてくれる。
それは、とても嬉しい事だけれど。
「お前はそんなに間宮がいいの?」
「え…」
関谷は手を止めず、あたしに言った。
「こんなに辛い思いしてまで、あいつが良いの?」
「…」
「俺なら絶対泣かせたりしないよ。居なくなりもしない。だから…」
言わないで。
お願いだから、言わないで。
自分勝手だけど、そう願った。
だって、結局何も返すことが出来ない。
気持ちを受け取っても、あたしはそれを返すことが出来ない。
ダメだよと心の中で繰り返したけれど、関谷は止めることなく続けた。
「俺じゃダメ?俺なら、いつだってこうして抱きしめてやれる」

