「今日からよろしくおねがいしますね。あたしの事、夕菜でいいですから」

「あ、うん…」

「じゃ、メールします」
 
 
それだけ言うとドアの方に歩いていった。

 

…俺、本気で好きだったよな、朝未ちゃんを。

恋はあまりしない方だったけど、あのときのそれは本当に、本当の恋だったはずだ。

それは簡単に忘れられるはずがない。

確かなものだった。
 

なのに、なんでだ?

今すげー追いかけたい。

彼女を。


彼女、を。
 
 
 
 


立ち上がって、急いで会計を済ませて。

店からでて少しの所を歩いていた夕菜ちゃんの手首をつかんで引きとめた。

 

「ストップ!…家まで送るよ」



まだ完全に忘れたわけじゃないけど。


"忘れるには、次の恋も大事だと思うんです、よ"

それ、信じてみようと思うんだ。

 
良いだろ?夕菜。