「本当に、朝未に言わなくていいんですか?」
「うん、俺はもう、諦める方向に歩くって決めた」
「後悔しませんか?」
「…それはもう、一年前にたくさんしたから」
後悔が先に立ってくれていれば、と思う。
そうすれば、これからずっと後悔なんてしないで生きていけるだろうと。
巧い生き方をして、満足して。
だけど、そんなことできやしないって。
たとえ出来たとしても、俺は。
「後悔してなんぼ…って、ね?」
「…なんですか、それ」
そう言いながらも笑顔を見せる目の前の彼女は、俺より年下な筈なのに、大人に見えた。
「じゃ、ごめんね、こんな話して。付き合ってっていうのも、ナシで良いよ」
そう席を立とうとすると、テーブルの上に置いていた携帯が、鈍い振動で着信を知らせた。
「…げ」
サブディスプレイに表示されたのは、
"壮"。

