やっとの思いで出した言葉。
それを受け入れてくれたのか、肩にあった手がすっと離れ顔も遠のいていく。
しかしそれはあたしの拒絶を聞いてくれたからではなかった。
「ふは、朝未ちゃーんかーわーいーいー」
「は…」
そう言って笑顔になる間宮さん。
頭の中で直ぐに騙されたと理解する。
最低最低最低、と心で連呼した。
「そうやって遊ぶのやめてください!」
「もしかして、キスとかしたことない?」
「そっ…バカにしないでください!それくらいあります!」
なんなんだろうこの人。
人を弄ぶのが趣味なんだろうか。
こんな人にあの時の失態さえ見られなければ、なんて後悔しても時既に遅し。
「ま、俺はキスしたかったんだけどね」
だけどそう言った間宮さんはどことなく優しく微笑んでいた。
不覚にも、一瞬だけドキッとしてしまったあたしは、それを打ち消すために言い返す。
「あたしはしたくないです!帰ります!」
もうやだ…なんでこんな目に、と少し鼻をすすった。
「朝未待てって」
帰ろうと歩き出したあたしの手をぱっと間宮さんが掴んで、
「な、なんですか」
ニッコリと笑って、
「アド教えて」
と携帯を片手に言ったのだった。

