「ダメかな、舞」


『はいはい、分かったよ。やればいいんでしょ、望夢』



──折れたのは、電話の向こう側にいる少女の方だった。仕方ないと言いたげに、溜め息を吐いている。


望夢と呼ばれた少女は、天井を指していた指を下ろして、小さく息を吐いた。



「ありがと。報酬は、前に欲しがってたモノでいい?」


『んにゃ、今回はタダでいいや。珍しいあんたが見れたからね』


「・・・悪趣味」


『そりゃどうも』



明日の昼間までには届ける、という言葉を最後に電話は切れた。


ケータイを閉じて、サイドテーブルに置くと、望夢は再び星を宙に描き始める。


「・・・約束、ようやく果たせるよ」



呟いた声は、宙に溶けて消えた。