side:龍騎
冷たい夜の風に身を震わせながら、裏町から空を見上げる。
夕方の明るかった朱色の空は、今ではすっかり薄暗い冷たい海色の空に様変わりしていた。
まるで、誰かが泣いて流した涙のような空の雲は、今も雨を降らせ続ける。
「よっと!」
「うっわ、卑怯だぜ今のっ」
「ゲームに卑怯なんてあるか?」
「だぁーっ、やられた!」
倉庫の中から、飛び交っている楽し気な声が聞こえてきて、張り詰めていた呼吸に余裕が出る。
雨に濡れない倉庫の裏口にあたる非常階段にいると、屋根に雨粒が当たる音が聞こえてくる。
ふぅと息を吐けば、腰を降ろしていた非常階段の横の扉が開き、誰かが出て来た。
「さみぃー、っと龍騎?」