顔を上げると、ふわりと額に唇が落とされる。あぁ、やっぱり無理だ。私は瑠矢に身を任せるように、彼の胸元に顔を埋める。


どんなに不安でいても、瑠矢は心を読んだみたいに当てて、私に安心感を与える。


こうして、抱き締めてくれる。ここは、私が普通の『女の子』になれる、唯一の場所。



「・・・そうだね」



・・・何も知らなかったんだよ。


あの子を思い出しながら、目を閉じる。私だって、何も知らなかったんだよ。


『大切な人』に、


知られたくない『過去』を、


伝える『勇気』を持つことが、


自分を『強くする』ことだって。


今、私が大切なモノがある『the knight』を守れるのは、瑠矢が居てくれるから。だから、私は強くなれた。


だから──ねぇ、凜華。


あなたを必要とする人は、あなたを『守ってくれる』から。あなたが大切だと思えば、きっと彼は応えてくれるから。