「姫ちゃーん」


「ん?」


「コイツ、果てしなくうざいにゃ。つか、反省してない?」


「見逃してやったのにな。・・・やっぱり、警察に突き出せばよかったな」


「やっ、やめてくれ──それだけはっ!!!」


「・・・黙れ、クズ」



冷たく笑う姫蝶に、及川は震える。それを見て、狼姫が及川の無防備な手を踏みつけた。


ミシッと、いやな音がする。及川の絶叫が響く。姫蝶は肩に乗せているルナを、朱里に渡すと、言った。



「二度も、私の家族に手を出したこと──存分に後悔するといい」


「ぎゃぁぁああっ!!!!!」



ボキッと、音がした。狼姫が足を退かしたが、その手は動かない。どうやら、彼女が折ったらしい。


姫蝶は、形のいい唇をカーブさせて、艶やかな微笑みを及川に向けると、踵を返した。