姫蝶というらしい少女が、近寄ってきた己の片割れにそう聞く。


小さな頷きが返事として返される。



「そっか、さすがは狼姫(ロウヒメ)」



姫蝶は小さく笑むと、自ら狼姫と呼んだ少女に歩み寄る。


二人は顔を見合わせると、ゆっくりと表と裏の境目を歩き出した。



「近々、奴等が動くらしいよ」


「・・・・・」


「奴等は、No.1に勝てると思う?」


「・・・無理」



最小限にしか喋らない狼姫に、姫蝶は屈託なく話し掛ける。その艶めいた唇は、蠱惑的にカーブを描いている。



「やっぱりそうだよね」


「・・・・・」



狼姫は無言で右の二の腕を撫でた。そこには、三日月とクリスタルの刺青が描かれている。


それは姫蝶の左の二の腕にあるものと同じ刺青。そして『the knight(ザ ナイト)』という文字も描かれていた。


二人は刺青を見つめてから、再び歩き出した。満月に照らされながら。



──凜華は、彼女達と再び出会うことをまだ知らない。


そして。


その身が、再び危険に晒されることすらも──・・・。