「怖い夢でも見たのか?」



低い声で、甘やかすように聞いてくる。ゆるゆると首を横に動かして、木藤を見上げ──後悔した。


離れたとは言え、まだいつもより近い──至近距離30センチ。


近くで見れば見るほど、木藤の顔立ちは綺麗で、青い瞳は余計に目を奪われて・・・。


何だか分からないけど、木藤が色っぽく見える。女を簡単にはオトせそうな妖艶さに言葉を失う。



「──凜華」



いきなり木藤の声に呼ばれて、全身が強張る。息を飲んで、



「な、なに・・・?」



精一杯声を振り絞ってそう言った。



「・・・・無理に、お前の過去を聞こうとは思わねぇ」



─────え?



「何を抱えててもいい。けど、無理すんな。一人で背負うのが無理なら言え」



──俺が一緒に背負ってやる。


甘く囁くように言われたその言葉。一滴の雫が泉に落ち、小さな波紋が広がるように私の心の奥底まで広がる。