時刻は夕方6時。
夕陽が眩しく、どこかの柔道部が走り出しそうなくらいに燃えている。
そんな時間に俺は雑巾を片手に教室を隅々まで磨いていた。
「本当に見たんですよー」
「わかったから手を動かさんか」
あの後俺は鬼神に首根っこをつかまれ教室に連れ戻された。
しかも正座というおまけつきだ…。
とどめには放課後教室の掃除を命じられ今に至り、先生じきじきの監視がついている。
そして俺が何回朝の出来事を話しても聞く耳を持ってくれない…。
「絶対見ました!黒髪の女の子が頭から落ちて行ったんですよっ!」
「でもそんなやつはいなかったんだろうが。早く帰りたいなら手を動かせ」
「たしかに見たはずなのにー…」
床を雑巾で磨きながら俺はぼやいた。
すると、さっきまで興味もなさそうだった鬼神がいきなりにやけ顔を作り話しかけてきた。
「お前それって…幽霊ってやつじゃねぇの?」
普段からぶちギレてる人がにやにやするとなんだか恐ろしい。
むしろキモい…。
それより幽霊って……。
「朝っぱらから幽霊ですか…。ずいぶん寝ぼけた幽霊ですね」
