ギフト


20分はたっただろうか。


額が未だに痛い…。


前では鬼神が熱心に語り、それを生徒が震えながら
聴いている。


それではある意味授業にならんだろうに。


そんなことを思いながら窓の方へ目をやった。


今日は驚くほど快晴で、雲1つない。


雨は嫌いだけど、真夏にこの天気はきつすぎる…。


今は夏休みの補習というやつであり、俺は部活もしていないので昼すぎには帰れるはずだ。


すでに帰りの事を考えながら外を見ていると、雲もないはずの青空になにかが陰り、そして落ちて行った。


一瞬それがなんなのかわからなかった。


しかしクラスでそれに気づいたのは俺だけのようだった。


鳥だとしても下に向かって飛ぶなんておかしい…。


そういえばなにか黒くて長い物がついていたような。

まるで髪の毛みたいな――

「人だぁぁぁぁ!!」


頭が一瞬にして真っ白になり、気づいたときにはすでに教室を走り出ていた。


「嘘だろ…。まさか自殺…!」


うちのクラスの窓はグラウンド側に面しているのでちょうどあの人影が落ちたのはグラウンドの隅のはずだ。


俺はそこに向かって全速力で走った。


俺の教室があるのは三階だ。


それより高い所から飛び降りたとすると、もしかしたら絶望的な状態かもしれない…。


最悪のケースを考えながら走り抜けると、ようやく自分のクラスの真下にたどり着いた。


グラウンド隅ということもあってあまり手入れされておらず、雑草がそこらじゅうに伸びている。


そしてそこには女子生徒の死体が…………なかった。

死体どころか誰もいない。

雑草が敷き詰められているから大事には至らずそのままどこかへ行ってしまったんだろうか…。


でもあんな高い所から落ちて無事ですむわけがない。

ましてやあの人は頭から落ちて行ったのに……。


「如月ぃ……」


俺が名探偵のごとく推理していると、現実に引き戻すような声が降りかかった。

杭で打たれたかのように動かない首で後ろを振り向くと、そこには鬼が立っていた……。