ギフト



心の準備が整うと、教室のドアに手をかけゆっくりと動かしていく。


「すんませーん…。寝坊しちゃいましたー」


「後ろで立ってろ如月ぃ!!」


「はーい…」


あの人はうちのクラスの担任であり学校を仕切る四天王とも言うべき存在、通称「鬼神」。


スーツの上からもはち切れんばかりの筋肉がよく目立ち、まるで戦を勝ち抜いてきた兵士のようだ。


居眠りなんてしたら一貫の終わり。


そんな人の授業に遅刻して来た俺は、ただの命知らずな冒険野郎のように映ったにちがいない。


ちなみに如月(きさらぎ)とは俺のこと。


如月優理なんていう名前を親からいただいたわけだけれども、名前の割にはパッとしない顔をしているとよく言われる。


そんなこと自分でもわかってるっつーの…。


目立ちたがり屋でもなんでもない俺になんでそんな名前がついてしまったのやら。


「背筋を伸ばさんかぁ!!」

また鬼神が声を張り上げ、自分のクラスを威嚇していた。


なんなんだこの軍隊みたいな県立高校は…。


思わずため息をついたら、鬼神の手から放たれたチョークが俺の脳天で砕け散った。