私は、歩道へ一歩足を踏み出すと辺りを見回した。

「ねえ、彼女の通う大学ってこの近くなんでしょ? この辺に思い出のお店はないの?」

「え?」

「そのお店でコーヒー飲みながら、彼女の話を聞かせて」

自分でそう言っておきながら、心のどこかで罪悪感を感じた。

……自分がそんなことをされるのは、絶対イヤだ。


なのにソウは余裕たっぷりで、視線を宙に泳がせながらうーんと考えると、

「そうだなぁ、よく待ち合わせをしてたのは駅前のハンバーガー屋さん。あと……別れ話をしたのは、今日泊まっているホテルの隣のカフェだけど」

と、特に気にする様子もなく答えた。

「だったら、そのカフェに行こう。ホテルは駅の近くだったよね?」

私がそう言い終わらないうちから駅の方向へと歩き始めると、ソウもすぐに後に続いた。

「ミナさん、いきなり攻めるねー」

「だって負けたくないもの」

「いいね、そのほうがワクワクする」