「でも……待って、やっぱり、私……」

「問答無用、年上のいうことは聞きなさい!」

その言葉にハッとして、私は海を見上げた。

「え……?」

「一度は大人しく騙されてあげたんだから。今度はミナミが言うことを聞く番だよ」

「……」

「それに俺4月生まれだから、同級生って言ってもほとんど1年違うし。十分年上だよ?」


そして、海は照れもせずに言った。

その綺麗な瞳で、私のことを真っ直ぐに見つめながら。


「誕生日おめでとう。ミナミの20代、全部俺がもらっていい?」


私は黙って頷いた。

「20代だけなの?」

「……じゃないよね、それから先も、ずーっとだ」

私たちは目を見合わせて微笑んだ。







一度目のキスで辛い失恋からの出口を見つけた私たちは、

恋が芽生えた思い出の場所で二度目のキスをした。

そして三度目は、雨が降りしきる夜に、涙で濡れたサヨナラのキス。







「これからは、ずっと、一緒だ」

そう言いながら、海はもう一度首を傾げ、その顔を私へ近づけた。



「好きだよ、美波」



目を閉じた瞼の隙間から、幸せいっぱいの涙が零れる。

私は海の腕をぎゅっと掴むと、ゆっくりとかかとを浮かせた。



「私も……海が大好き!」






こうして私たちは、

四度目にしてようやく、



「はじめまして」のキスをした。




-fin-