三度目のキスをしたらサヨナラ

だけどソウはそんな私の動揺なんてお構いなし。

ベンチから立ち上がると、私の前に立って話を続けた。


「ねえ、ミナさん。そろそろ自己紹介していい?」


ソウはそう言うと、私の手からブーケを取ってベンチに置くと、「さあ、立って!」と私の両手を引き上げた。

立ち上がると、すぐ目の前にソウの胸があって、
少し目線を上に上げると、ソウの笑顔があって。

たったそれだけのことが恥ずかしくて、私は思わず俯いてしまった。


「じゃぁ、俺からいくね。──はじめまして! 俺はカイ。『海(うみ)』って書いて『カイ』って読むんだ。そして……来月からは晴れてK大生!」

「え……」

その嬉しい知らせにソウを見上げると、そこには私を見つめる満面の笑みがあった。

「合格したんだね……おめでとう」

「ありがとう。引越しの準備や入学の手続きに忙しくて、こんなに遅くなって。……待たせちゃってごめんね」

私は黙って首を横に振った。

この1ヶ月は確かに長かったけれど、そんなこと、今ではもうどうでもよくて……。

「あれから、寝る間も惜しんで勉強したんだよー」

そのせいだろうか?
ソウは少し頬がこけて、痩せたような気がした。

そして初めて会ったときは短かった髪も、ずいぶん伸びていた。

「全部、ミナさんのおかけだよ」

だけど、そう言って笑う笑顔は以前と何も変わっていない。

私が大好きな、ソウ──


ううん。


大好きな、海のものだった。