三度目のキスをしたらサヨナラ

ふと、ソウの視線が私のキャリーケースの上に乗せられていたブーケに移った。

「ソータさんの結婚式、今日だったんだね」

「うん……」

「ちゃんと2人のこと、祝ってあげた?」

「うん……」

私は、蒼太と佐和子の姿を思い浮かべて、フッと微笑んだ。

「佐和子、とっても綺麗だったのよ。蒼太もすごく幸せそうだった。……これは、佐和子にもらったの」

私はブーケを手に取り、ソウに見せた。

「私が『おめでとう』って言ったら、佐和子ったら泣き出しちゃって。何度も何度も『ありがとう』って頭を下げるもんだから、せっかく綺麗にしてたセットも化粧も崩れちゃって……」

ブーケからは、柔らかい花の香りがしていた。

「……こっちまで、もらい泣きしちゃった」


「そうかー」

黙って話を聞いていたソウが、その手を私の頭にポンと乗せた。

「いつか見返してやろうよ、俺たちも」

「──え?」

驚いてソウの顔を覗き込んだけれど、ソウは相変わらずの笑顔だった。

「また……平気な顔して、人を驚かせること言うんだから」