三度目のキスをしたらサヨナラ

彼は、大きなため息をひとつつくと、

今朝、H県から受験のために上京してきたばかりだということや、
第1志望校がこの近辺にあり、すぐ近くのホテルに滞在していることを簡単に説明してくれた後、

「俺、東京にいるのは今日から5日間だけなんだ」

そんな長い前置きをしてから、彼女のことを語り始めた。


「彼女は地元の同級生なんだけど、今はこっちの大学の学生でね」

高校3年の秋に交際が始まった2人は、この近辺にあるN大学へ揃って進学する予定だったという。

だけど。
合格したのは彼女だけで、彼はN大学だけでなく、他の大学にも合格できずに浪人が決まってしまった。

──それから、2人の長い遠距離恋愛が始まった。

1年の辛抱だから……と約束したのに結局2年。

「勉強しないといけないって分かってるんだけど、バイトばかりやってたよ」

彼は笑った。

聞けばこの2年間、毎日のようにバイトをして旅費を稼ぎ、月に一度は彼女に会う為に東京へ出てきたというのだ。

「親にはもちろん、有名な予備校の講義を受けるためだってウソついてね」

「そんなことを続けて、彼女は何も言わなかったの?」

「そりゃあ会う度に“無理しないで”って言ってくれたけど……アイツ、そう言いながら泣くんだよね。そんな泣き顔見ちゃったら、こっちは意地でも無理したくなるじゃん?」

……何やってるのよ、受験生。