長いトンネルを抜けると、そこは夕日が輝く東京だった。



間延びしたテープのアナウンスが、バスが都内に入ったことを繰り返し告げている。

私がうたた寝をしているうちに、中距離バスは海沿いの田舎町を抜け、東京の喧騒の中に戻ってきていた。


寝ぼけ眼でカーテン越しに外を覗くと、空には綺麗なオレンジ色の夕陽。


──今、何時頃だろう?

3月に入ると日沈時間が遅くなり、時間の感覚も狂いがちだった。

正確な時間を確かめようと携帯を開いた私は、そこで1件のメール着信があったことに気づいた。


《今日は来てくれてありがとう。そして20歳の誕生日おめでとう》


それは、蒼太からのメールだった。

発信時刻は、ちょうど20年前に私が生まれた時刻。

この瞬間を、去年までは蒼太と一緒に祝っていたんだ……。

なんだかそれは遙か昔のことのように思えて、私は優しい気持ちで携帯を閉じた。


きっとこれが、蒼太からの最後のメールになるだろう──。