タクシーは、東京駅まであと少しというところで渋滞につかまってしまった。

何度も変わる信号。
いくら待っても消えない前の車のブレーキランプ。

その光は朱がかった赤色で、周囲に広がる排気ガスで滲み、ぼんやり、ゆらゆらと揺れているように見えた。

だけど、そんな穏やかな動きでさえ、今の私にはイライラの原因にしかならなくて。

「ここからなら、歩いた方が早いですよ?」

私の苛つきを察した運転手が申し訳なさそうにこちらを見てそう言うと、私はそこでタクシーを降りた。



別に乗車する新幹線の時間が決まっているわけではないのに。

──ソウに会いたい。

そんな、一度走り出した気持ちを止めることは出来なかった。