三度目のキスをしたらサヨナラ

「ねぇ、ウーさん」

私は厨房での仕事を一段落させ、私にラーメンを出してくれたウーさんに、その日のことを聞いた。

ウーさんは私の前に立ったまま、腕組みをして考えた後、

「あぁ、アイツはあの日1番の客だったな。店を開けてすぐに、ものすごく暗い顔した奴が入ってきたんだ。確かアイツ、メニューにない餃子とチャーハンまで頼んで。元気なさそうな割に良く食う奴だなぁって思った記憶があるよ」

宙を見つめながら、その日の様子を少し懐かしそうに話した。

「……そうなんだ」

これで、ソウが私の名前を知っていたことは間違いなくなった。

あの時、ソウが呼んだのは、きっと私のことだったんだ。


『ミナ』と呟いたことを聞かれていたと知って照れたソウの顔と、
『他に好きな人が出来たんだって』というリョーコちゃんの言葉が、
何度も何度も頭の中で繰り返される。

それって、もしかして──。

はやる気持ちを抑えようとするけれど、私の心拍数は上がる一方だった。


だけど、うぬぼれちゃいけない。
自分に都合のいいように考えちゃダメだ。


私は自分に言い聞かせた。

そうよ。

だって、ソウは、何も言わずに帰っちゃったんだから──