「ねぇ、ウーさん」
私は厨房での仕事を一段落させ、私にラーメンを出してくれたウーさんに、その日のことを聞いた。
ウーさんは私の前に立ったまま、腕組みをして考えた後、
「あぁ、アイツはあの日1番の客だったな。店を開けてすぐに、ものすごく暗い顔した奴が入ってきたんだ。確かアイツ、メニューにない餃子とチャーハンまで頼んで。元気なさそうな割に良く食う奴だなぁって思った記憶があるよ」
宙を見つめながら、その日の様子を少し懐かしそうに話した。
「……そうなんだ」
これで、ソウが私の名前を知っていたことは間違いなくなった。
あの時、ソウが呼んだのは、きっと私のことだったんだ。
『ミナ』と呟いたことを聞かれていたと知って照れたソウの顔と、
『他に好きな人が出来たんだって』というリョーコちゃんの言葉が、
何度も何度も頭の中で繰り返される。
それって、もしかして──。
はやる気持ちを抑えようとするけれど、私の心拍数は上がる一方だった。
だけど、うぬぼれちゃいけない。
自分に都合のいいように考えちゃダメだ。
私は自分に言い聞かせた。
そうよ。
だって、ソウは、何も言わずに帰っちゃったんだから──
私は厨房での仕事を一段落させ、私にラーメンを出してくれたウーさんに、その日のことを聞いた。
ウーさんは私の前に立ったまま、腕組みをして考えた後、
「あぁ、アイツはあの日1番の客だったな。店を開けてすぐに、ものすごく暗い顔した奴が入ってきたんだ。確かアイツ、メニューにない餃子とチャーハンまで頼んで。元気なさそうな割に良く食う奴だなぁって思った記憶があるよ」
宙を見つめながら、その日の様子を少し懐かしそうに話した。
「……そうなんだ」
これで、ソウが私の名前を知っていたことは間違いなくなった。
あの時、ソウが呼んだのは、きっと私のことだったんだ。
『ミナ』と呟いたことを聞かれていたと知って照れたソウの顔と、
『他に好きな人が出来たんだって』というリョーコちゃんの言葉が、
何度も何度も頭の中で繰り返される。
それって、もしかして──。
はやる気持ちを抑えようとするけれど、私の心拍数は上がる一方だった。
だけど、うぬぼれちゃいけない。
自分に都合のいいように考えちゃダメだ。
私は自分に言い聞かせた。
そうよ。
だって、ソウは、何も言わずに帰っちゃったんだから──



