そして壁に掛けられた時計を指さしながら、言った。

「ほら、それより早くしないと、そろそろ大和くんが来る時間だよ?」

「そうなんだけど、着ていく服が決まらなくて」

多華子は足元に散乱しているセーターの中から2着を手に取ると、私の目の前のテーブルに並べた。

「ねえ、白とピンク、どっちがいいと思う?」

「どっちも似合ってるよ」

「それが一番困るんだってー」

多華子がかわいい悲鳴を上げたところで、玄関のチャイムが鳴った。

「ほら。大和くん、来ちゃったよ」

「いやだ、もう来たの!?」

「いいよ、私が出るから。多華子は早く着替えておいで」

私は雑誌を閉じて立ち上がると、困った顔をして立ち尽くす多華子の真後ろに立ち、その肩をぽんと叩きながら
「ピンクの方がかわいいんじゃない?」
と言ってリビングのドアを開けた。

その後ろから、「ありがとー!」という嬉しそうな多華子の声が届く。


……ヤレヤレ。