だけど、以前とは変わったことが、ひとつだけあった──。


「ねえ、多華子は蒼太の結婚式の後、どうするの?」

リビングのソファに寝そべって雑誌を読んでいた私は、スタンドミラーに全身を映しながらかれこれ15分以上も今日のデートに着ていく洋服を選んでいる多華子に声をかけた。

「うーん。私はそのまま実家に泊まるかなぁ。一応身内だから、式の後の会食に出ないといけないんだよね。そのあと帰るとなると、こっちに着くのは夜遅くなっちゃうし」

多華子は鏡に向かったままの姿勢で答えた。

だけどその声は、以前のように緊張したものではなく、ごく自然な口調だ。
ううん。むしろ洋服選びに夢中で上の空……といった感じさえする。

「そうか……じゃあ、私は1人で帰ろうかな」

「……結婚式、出ることにしたの?」

多華子は胸に当てていたセーターを下ろすと、そこでようやく私の方を向いた。

「うん……。だけど、式が終わったらすぐにこっちに戻ってくるつもり。夜にはウーさんが誕生祝いをしてくれることになってるしね」

少し心配そうな顔で私を見つめる多華子に、私は笑いかけた。

「そんな顔しないで。私は大丈夫だよ、もう」