ソウが車を駐めている青空駐車場は、メイン通りからひとつ外れた裏通りにあった。

私たちは、土がむき出しになった地面を足早に駆けて車へ向かった。

ぬかるみに足をとられる度に靴やズボンの裾に泥が飛び散ったけれど、ソウはそんなことはお構いなしといった感じで。

「早く!」

私の肩を抱いたままレンタカーの助手席側へ回り込み、ドアを開けてくれた。

「でも……車が汚れるよ?」

「車は後で掃除すればいいから。ミナさんに風邪ひかれるほうが大変だよ」

ソウに強引に押し込まれ、私は濡れた体を助手席へと滑り込ませた。


あ……。

シートに腰掛けた途端、私は小さな違和感を感じた。

その理由は──シートの位置。

座ったときの視界が、ほんの少しだけど、昨日とは違っていた。


昨日よりも若干後ろに下げられた助手席に座り、雨に濡れながら運転席側へ回るソウの姿をずっと目で追いかけながら、私は1人で納得した。


……彼女が、ここに座ったんだ。


蒼太を見失った、こんなときだっていうのに──。

私は、自分でも驚くくらい冷静に、このシートに座ってリラックスする彼女の姿を思い浮かべていた。