私は力ない声で呟いた。
「……どうして、ソウが追いかけてくるのよ」
私が暴れるのをやめても、ソウは腕に込めた力をすぐには緩めなかった。
「ウーさんが追いかけろって。……お前が止めてやってくれって」
ウーさんったら、余計なことを……。
その頃にはすっかり落ち着きを取り戻していた私は、思わず苦笑いしてしまった。
「ソウ、お願い。痛いからもう離して」
私がそう言うと、ソウは「ごめん」と言って、ようやく腕の力を緩めた。
「大丈夫?」
ソウが心配そうに私の顔をのぞき込む。
私は目を瞑って、「うん」とだけ答えた。
「ねえ、ミナさん。さっき、どこに行こうとしてたの?」
ソウが私をじっと見つめている気がした。
だけど私の視線は、ソウのそれとは交わらなかった。
私が見ていたのは、ソウではなく、ずっとずっと先にある建物──。
ソウはそんな私の目線を追って、ゆっくりと後方を向いた。
──その先に見えているのは、原色の赤い幟。
雨が近いのだろう。
強めの風にあおられて、その幟は遠目から見ても分かるほど激しくはためいていた。
「まさか……この前の牛丼屋?」
私は黙って頷いた。
「……あぁ、そうか。……今、やっと分かったよ」
ソウは、そんなため息まじりの声を出すと、その場に座り込んでしまった。
「ずっと不思議だったんだ。……ミナさんが、どうしていつもウーさんのお店にいるのか。……どうして一昨日、イタリアンレストランじゃなくて牛丼屋を選んだのか」
そして、手を伸ばして私の手をもう一度強く掴むと、私の顔を見上げながら続けた。
「ミナさんは、そうやって、いつもソータさんを探していたんだね」
私は、牛丼屋の幟が風に揺られるのをじっと見つめながら、大きくひとつうなずいた。
「……どうして、ソウが追いかけてくるのよ」
私が暴れるのをやめても、ソウは腕に込めた力をすぐには緩めなかった。
「ウーさんが追いかけろって。……お前が止めてやってくれって」
ウーさんったら、余計なことを……。
その頃にはすっかり落ち着きを取り戻していた私は、思わず苦笑いしてしまった。
「ソウ、お願い。痛いからもう離して」
私がそう言うと、ソウは「ごめん」と言って、ようやく腕の力を緩めた。
「大丈夫?」
ソウが心配そうに私の顔をのぞき込む。
私は目を瞑って、「うん」とだけ答えた。
「ねえ、ミナさん。さっき、どこに行こうとしてたの?」
ソウが私をじっと見つめている気がした。
だけど私の視線は、ソウのそれとは交わらなかった。
私が見ていたのは、ソウではなく、ずっとずっと先にある建物──。
ソウはそんな私の目線を追って、ゆっくりと後方を向いた。
──その先に見えているのは、原色の赤い幟。
雨が近いのだろう。
強めの風にあおられて、その幟は遠目から見ても分かるほど激しくはためいていた。
「まさか……この前の牛丼屋?」
私は黙って頷いた。
「……あぁ、そうか。……今、やっと分かったよ」
ソウは、そんなため息まじりの声を出すと、その場に座り込んでしまった。
「ずっと不思議だったんだ。……ミナさんが、どうしていつもウーさんのお店にいるのか。……どうして一昨日、イタリアンレストランじゃなくて牛丼屋を選んだのか」
そして、手を伸ばして私の手をもう一度強く掴むと、私の顔を見上げながら続けた。
「ミナさんは、そうやって、いつもソータさんを探していたんだね」
私は、牛丼屋の幟が風に揺られるのをじっと見つめながら、大きくひとつうなずいた。



