蘇るのは、このカウンターに並んで私たちが交わしていた会話。
『もーう! こんな風に重ねたら、コップの底が汚れるでしょ!?』
『あーごめん、つい』
『つい、じゃないわよ。何度言ったらわかるの? ウーさんが洗うの大変なんだから。それに割り箸も、コップから出してゴミ箱に捨てて!』
『はいはい』
『“はい”は1回!』
私はカウンターにそっと手をついた。
それは、ちょうどこの場所で幾度となく交わされた会話だ。
『……ねえ、私の言うこと、ちゃんと聞いてるの?』
『聞いてるよ。いちいちうるさいなぁ、ミナは』
そんな私たちの会話を、ウーさんはいつも笑いながら厨房で聞いていた。
『全く、ミナは口うるさい嫁さんになりそうだなぁ。先が思いやられるよ。ねえ、ウーさんもそう思うだろ?』
そう言って、大きな手で私の頭をポンポンと叩くのは──
「蒼太が……来てたの?」
ウーさんは腰に手をあてると、ひとつ大きなため息をついた。
「──ああ」
ウーさんは、淡々と続けた。
「最後の挨拶に」
その言葉を聞いた途端、激しい目眩がした。
ふわっと後ろに倒れそうになったところを、ソウが「危ない!」と声をあげ、後ろから肩を抱いて支えてくれる。
「私のことは? ……何か言ってた?」
そう尋ねる声が震えた。
だけど、ウーさんは私の目を真っ直ぐ見据えながら、大きく首を横に振った。
「いいや、何も」
その瞬間、私は後ろを向くと、私を支えてくれていたソウを両手で押しのけて『ラーメン うちだ』を飛び出した。
『もーう! こんな風に重ねたら、コップの底が汚れるでしょ!?』
『あーごめん、つい』
『つい、じゃないわよ。何度言ったらわかるの? ウーさんが洗うの大変なんだから。それに割り箸も、コップから出してゴミ箱に捨てて!』
『はいはい』
『“はい”は1回!』
私はカウンターにそっと手をついた。
それは、ちょうどこの場所で幾度となく交わされた会話だ。
『……ねえ、私の言うこと、ちゃんと聞いてるの?』
『聞いてるよ。いちいちうるさいなぁ、ミナは』
そんな私たちの会話を、ウーさんはいつも笑いながら厨房で聞いていた。
『全く、ミナは口うるさい嫁さんになりそうだなぁ。先が思いやられるよ。ねえ、ウーさんもそう思うだろ?』
そう言って、大きな手で私の頭をポンポンと叩くのは──
「蒼太が……来てたの?」
ウーさんは腰に手をあてると、ひとつ大きなため息をついた。
「──ああ」
ウーさんは、淡々と続けた。
「最後の挨拶に」
その言葉を聞いた途端、激しい目眩がした。
ふわっと後ろに倒れそうになったところを、ソウが「危ない!」と声をあげ、後ろから肩を抱いて支えてくれる。
「私のことは? ……何か言ってた?」
そう尋ねる声が震えた。
だけど、ウーさんは私の目を真っ直ぐ見据えながら、大きく首を横に振った。
「いいや、何も」
その瞬間、私は後ろを向くと、私を支えてくれていたソウを両手で押しのけて『ラーメン うちだ』を飛び出した。



