三度目のキスをしたらサヨナラ

その晩、バイトを終えて『ラーメン うちだ』に向かう私の足取りは重かった。

ソウと、どんな顔で、何を話せばいいんだろう。

「受験、うまくいった?」
「彼女ときちんと話し合えたの?」

それらしい台詞を次々と頭の中に浮かべては、ため息をつく。

もし、ソウから「彼女と仲直りをした」っていう報告を聞かされたらどうする?

その時には笑って、おめでとうって言ってあげればいい。

きっと、嬉しそうな顔をして彼女の話をするソウは、《ゲーム》のことなんて忘れていて。


──いっそのこと、そのほうが楽かも知れない。


これで何度目だろう。
私はまたひとつ、はあっと大きなため息をついた。




『ラーメン うちだ』からは、今日も柔らかなオレンジの灯りが漏れていた。

私はドアの前に立つと、赤暖簾の隙間からそっと店内を覗いた。

ソウは既に店内にいた。
その姿を見ただけで、私の心臓はドキッと大きな音を立てる。

ソウは今来たばかりなのだろう。
カウンターの左端の席に腰掛け、黒いダウンジャケットを脱いで隣の空いている椅子へ置くところだった。

そして一言、二言、厨房に立つウーさんと会話を交わす。


店内にいるのは、ソウとウーさんだけだった。

──いつまでもこんなところに立っていても仕方がない。

私は覚悟を決めると、ゆっくりと『ラーメン うちだ』のドアを開けた。