彼は、いつからそこにいたんだろう?

店内には私と彼の2人だけしかいなかった。

彼は、私からいちばん離れた左端の席に1人で座って、泣きながらラーメンを食べていた。

厚手の黒いパーカー。
濃紺のタイトストレートのジーンズ。
まだ新しい、黒地にゴールドのラインが際だつスニーカー。

何も手をかけていない無造作な短髪は、真黒で硬そうだった。

細身で、身長はかなりあるように見える。

年は20歳前後、私と同じくらいだろうか?

その風貌からは、まだ若い学生のような印象を受けた。

背を丸め大きな口でラーメンを頬張るたびに、ラーメン鉢に顔を突っ込んでしまうんじゃないかと思うくらい前のめりになって、「ぐぅっ……」とむせぶ。

遠目から見る横顔からは決して分からないはずなのに、彼の目から大粒の涙が次々と零れ落ちるのが見えるような気がした。