三度目のキスをしたらサヨナラ

今日は楽しく過ごせていたし、蒼太の話だって思っていたよりスムーズに言葉にすることができた。

だから大丈夫。
私は泣かない。

そう思っていたのに、一度溢れた涙は目を閉じても止まらなかった。

「……私の負けだね、ソウ」

ソウは何も答えなかった。

黙って、両腕を私の後ろ頭と背中に回して、私を包み込むように抱きしめてくれるだけだった。

時折、私を落ち着かせようとして、ソウの優しい手が私の髪を撫でる。

その優しさが更に私の涙を誘って、ソウのセーターはみるみる涙で滲んでいった。


──どれくらい泣いていたんだろう。
気がついたときには涙が止まっていた。

その後もしばらくソウの心臓の音を聞きながら茫然としていると、ふとソウの手が私の頬に触れた。

「俺なんかよりよっぽど、ミナさんの方が辛い思いをしたんだね」

ソウはその温かい手で、涙の跡に張り付いた私の髪を優しく後ろへ流してくれる。

「ハンディキャップ、つけたほうがよかった?」

私はソウの胸にその表情を隠したまま、首を横に振った。

「いいの。負けは負けなんだから」

私がソウのセーターをぎゅっと掴むと、

「負けず嫌いだね、ミナさんは」

ソウはそう言ってフッと笑みを漏らすと、俯いていた私の頬を両手で包み、その顎を軽く持ち上げた。