☆樋口蓮 サイド☆



…あっ、李津だ。

向かいの座席の端に頭を垂れて、寝ている。

あれ、いつか隣のおじさんの肩に乗っかるな。

がたんっ、と駅に電車が止まる時、大きく電車が揺れた。

あっ、今の揺れ、絶対にあいつ倒れる、と思ったと同時に、李津は隣のおじさんの肩に頭を乗せた。

明らか困った顔をするおじさん。

そりゃそうだ。女子ならまだしも、男子だ。

嬉しくもかゆくもないだろう。

「……はぁ…」

俺はためいきをつきながら立ち上がって、その可哀想なおじさんのところに向う。