「あっ、私、お…お手洗いに……行ってくるね」

三好さんはあたふたしてそのまま、走って教室を出た。

十秒後、廊下で、キャハハハと嬉しそうな声と「良かったじゃん」とか「運命?!」とかいう大きな声が聞こえてくる。

がたっ、と後ろの席に誰かが座った。

後ろを振り向くと、男子だった。

その男子は嬉しそうに私を見て、にっこりと笑った。

「俺、吉高克弥。席前後、よろしくな」

いわゆる誰とでも仲良く出来るオープンな人だな、て直感的に私はそう思った。

「男子、前で良かったー」

吉高くんはそう言った。

どうやら、この人も私が女子であることに気付いていないらしい。

「俺、前に女子いると妙にキンチョーするんだよね。ははは。バカだろ?」

楽しそうに笑う、吉高君に私もつられて笑う。

「お前は?名前、何?」

「俺は木ノ下李津だよ」

思わずそう答えた。