先輩の言った通り、次の駅で大半のサラリーマンが降りた。
同時に、私は樋口先輩から離れる。
「…明日から車両変えようかな…」と樋口先輩がこぼす。
そして、慣れた手つきで少し首元のネクタイを緩める。
「熱くない?ネクタイ、緩めたら?」
「いえ、いいです。入学式初日から…」
「ふうん。…さっきから思ってたんだけど…」
樋口先輩は私を上から下を見る。
もしかして……私が女、て気付いてくれた?
「男子のわりには華奢だね。手首を掴んだ時、女子かと思って、一瞬焦ったよ」
そう言って、ハハッ、と笑う先輩。
対する、一気に脱力してします私…。
女子かと思ったんじゃなくて、女子なんです。
誤解をとこうと、私は、「あの…」と言った瞬間だ。
