「相談したいんじゃないの、バカ。」
既に食べ終わった香里がコーヒーカップに口をつけながら、頬っぺたを膨らませていた。
「あぁ、まぁ……。」
ぷいっと遠くに目を動かして誤魔化す。
直ぐに違う事を考えてしまう。
あたしの悪い癖。
聞いてもらうためにわざわざランチに誘ったっていうのに。
秘書課につくや否や、色んな取引先の重役の名簿を見せられ、今日中に全員の名前と顔を覚えるようにと言われた。
それがあたしの初仕事。
別に志願したわけじゃないのに、なんでこんな事しなきゃなんないのか。
「秘書課と言えばさ」
と、香里が身を乗り出してきた。

