うはっ、意外に重いっ!!
やっぱり置いてくるべきだったか……木彫りの熊さん。
シャケくわえた、北海道土産定番の熊さん。
いや、ダメだ。
苦楽を共にした熊さんをおいてけぼりなんて、出来やしない。
………。
って考えてる余裕なんてない、急がなくちゃ。
出勤したその足で来るように言われてたんだった!
時計の針はもうすぐ30分を過ぎようとしている。
「お世話になりましたっ!」
あたしは第一営業部の皆に頭を下げて、エレベーターへダッシュした。
背後で、「熊はいらんだろ。」なんて言われたのは聞かないフリをしとこうか。
そんな真下 るい、29歳(まだ言う)。
はいはい、もうすぐ三十路。
今日から、秘書課に大移動です。