「早くこのデッカイ荷物持って行けよ。10階だぞ?間違えるなよ?」


「わかってるし。っていうか、蹴るな!」


昨日荷造りしておいたダンボールをコツンと蹴られる。


はは、と浅く笑う顔は爽やか好青年。

何気にフロアーの女の子の憧れだったりするんだ。


けっ!本当は腹ん中どす黒い癖にさ。


騙してんじゃないよ。


「しかしお前、これって本当に会社に必要なのか?」


蓋を開けたままのダンボールからつまみ出す。


「必要っ!超必要だしっ!これがないと働けないんだしっ!」


バッと勢いよく奪い返す。


「………こんなくたびれた変な犬がか?」


「くたびれてないやいっ!ビーちゃんはねこちゃんです。ペルシャネコだし!」


「わかったわかった、犬でもウサギでも良いから早く行け。お待ちなんだから。」


時計を指す、堤マネージャー。


「うげっ、ヤバイじゃないか!怒られたらあんたの所為だかんねっ!」


ダンボールの一番上に鞄を放りこんで、下から持ち上げた。