「和貴君」
「義兄さん……」
「上手く行ってないみたいだな」
「そう…ですね。一筋縄には行き
ませんね」
「何があったのか、話してはくれ
ないか？」
「……………そもそもの原因は、
指輪…なんです」
「指輪？」
「すぐに渡せばよかったのに…。
俺がグズグズしていたせいで零を
傷つけ、勘違いさせてしまった」
「…………その指輪は今どこに？」
「零のところに置いてきました。
“零の好きにしていい”と言い残
して。恐らくもう…ゴミの中にあ
るかと」
「…………そうか。だとしたら…
それはとても“悲しいすれ違い”
だな」
「はい…」
「明日から、零ちゃんのところに
行ってもいいかな？もちろん、俺
一人で」
「一人で…ですか？」
「あぁ。茉希が行くと余計、誤解
を生みそうだ」
「………お言葉ですが義兄さん。
そっとしといてもらえませんか？
これは俺らの問題です。俺たちで
どうにかすべきことです」
「…………わかったよ。そのかわ
り両想いになった暁には、会わせ
てくれよ？」
「もちろんですよ」
両想いになれるかは
わかんねぇけど。
最善は尽くすつもりだ。
