「…………指輪。リビングのテー
ブルに置いておくから。……零の
好きにしていいよ。一緒にいたく
ないって零が言うんなら俺、先に
一人で日本に帰るし」
「「……………………………」」
少しの間のあと、
「ごめ…ん……。一人に………なりた……い…」
蚊の鳴くような声で
零はそう言った。
「じゃあ…高梨(秘書・女)呼んで
おくから…。気が済むまで、ここ
(南の島・別荘)にいていいから。
帰るときに連絡さえくれれば、い
つまでいても構わないから」
「……………」
「俺、昼過ぎにここを出るから」
引き留めてくれることを
望んでいるわけじゃないけど。
もしかしたら…っていう
希望をこめてそう言った。
「……………」
それから零の反応は
まったくなくて。
こんな新婚旅行の終わり方は、
嫌だった。
だけど…仕方ないんだ。
………っつーか、自業自得だ。
さっさと渡しておけば、
こんなことにはならなかった。
………なんて後悔したところで
後の祭りだけど。

