「広い…ですね」
部屋を見てそう言った零。
「2人で暮らすには十分だろ?」
否…2人にしては広すぎるか。
「十分すぎる…というか、あり余
るのでは?」
「ま、住めば都。だろ??」
「そうですね。大は小をかねる。
ですね」
「零」
「………なんですか?」
「俺は、“お人形”を望んではい
ない」
「…………えっ?」
―――車中でもずっと、
そう思っていた。
零は笑わない。
…………否、笑おうとしない。
零は表情を変えない。
…………否、変えようとしない。
その姿が俺の目には、
“人形”でいようと、
必死になっているようにしか、
見えなくて…。
思わずそう言ってしまった。