この人が、これから一緒に仕事する人。
イケメンだぁ…。
でも知らなかったってことは、小学校一緒じゃないよね。
こんな人いたなんて気付かなかったよー。
まぁずっと中川一筋だからね。
でも、前田くんはずっと無表情で、なんだか話しかけづらかった。
こっちを見てもいない。
なんか、喋ったほうがいいよね。
これから一緒にやってくんだし。
でもなんて…。
いろいろ考えていると、図書委員の先生っぽい人が話しはじめた。
「ではまず、持ってきてくれた学級文庫に本を入れてください。」
あ、学級文庫…。
これって、持ってくるものなんだ。そういえば皆持ってきてる。
前田くん、持ってきてくれたんだ…。
「前田くん、ありがとう。あたし持ってくること知らなくて…ごめんね」
「…あ、うん」
はじめてこっちを向いた。
目が、すごくきれい。
でもすぐ下を向いてしまった。
無愛想だなぁ…。
「優音ちゃん、先生に聞かなかったの?」
え。
ぱっと隣を見た。
隣は3組の女子のみさきちゃん。
元気で明るい子。
いきなり話しかけられたからビックリした。
「え、な、にが?」
とっさに答えたから、カタコトみたいになっちゃった。
「学級文庫持ってくるの」
「あ、うん。聞いてなかった」
「うっそ。先生言ってたはずだよ。ね、言ってたよね前田」
前田くんは、顔を少しあげて、目線は下のまま、
「言ってた」
と答えた。
「え、嘘だぁ。言ってなかったよ!あたし聞いてないもん」
「それは優音ちゃんが聞いてないだけだよ〜」
うぅ。
認めざるをえない。
「い、以後気をつけます…」
しゅん、となっていると、先生が怒っている声がこちらに飛んできた。
「そこ、お喋りしない。作業しなさい」
「はぁーい」
みさきちゃんが嫌そうに答えた。
私は、小さく「はい」と言った。
