朝。
学校に行くため、外に出る。
今日から9月。
まだ、太陽の熱がジリジリする。
暑いのは嫌い。汗かきだし。
今日から、2学期。
夏休みの宿題は全部終えた。
去年より、長い夏だった気がする。
何かが足りなかった夏。
あれから、アイツと一言もしゃべってない。
「遅くなってごめんっ」
玲が慌てて下に降りてきた。
私はマンションに住んでいて、玲も同じマンションで、小さい時から仲が良い幼なじみなのだ。
「大丈夫、行こう」
私はそう言って、歩き始めた。
久しぶりの教室に入る。
「優音、久しぶり!」
由香が最初に声をかけてくれた。
いつも通り。笑顔が可愛い。
「久しぶり」
私も笑顔を返した。
「焼けたね?」
「え、そうかな」
私は、剣道部であまり外に出ないはずなんだけど、何故か他の人より肌が黒い。
地黒、ってやつ。
あまり気に入らない。
ふと、窓側の一番後ろの席を見る。
前田くんも、相変わらず1人だ。
無表情で窓の外を見ている。
今はバスでみた、哀しそうな表情はしていない。
あの夜、慰めてくれたことを思い出すと、なんとなく、にやけてしまう。
「今日からまた学校だね…って、何で笑ってるの?」
「え、あはは。それより、由香は水城くんとどっかデートした?」
一瞬、由香の顔が曇った。
「ん…、結局してないよ」
でもすぐ戻って、そう言った。
「そっかー…」
キーンコーンカーンコーン。
そこで、鐘が鳴った。
私達は自分の席に向かった。
由香の曇った顔は、何も気にしなかった。