チャンスは、意外にあるものだ。
顔を洗いに水道に行ったら、後から中川も来て2人きり…とか。
帰り道、1人でいる中川を見つけた…とか。
でも、話し掛けるまではできるんだけど、「好き」の2文字は言えなかった。
たった2文字。
それにこんな重みがあるなんて…。
はぁ、もうなんだか言わなくてもいい気がしてきた。
でもそうこうしている内に時間は経ち、6月30日。
約束の最後の日。
「まだ言えないの〜?」
お昼のとき、由香はいじわるにそう言った。
うぅ。由香だって告白してないじゃん。
「7月に延ばしてよ」
「ダメ。今日絶対言うの」
「うぇぇ…はぁ〜い…」
由香厳しいよ〜。
でも、なぜか断れない…。
その日は、運悪くなかなかチャンスが無かった。
中川はだいたい男子の輪の中にいるし、話し掛けられもしない。
部活が始まる前。
ぼーっと見ていると、たまに、目が合う。
好き、って気付いた時も、こうやって遠くから見てる時だった。
急にかっこよく見えてしまったのだ。
そしたら、胸がドキドキしてきて…。
今、あの時と一緒。
でもあの時、まさか私が中川に告白するなんて思ってなかった。
でも今…想いを伝えたいと思ってる。
あの時感じたこの気持ち。
あの時よりもっと大きくなったこの気持ち…。
伝えたい。
でも怖い。
私は臆病だ…。
また、チラッと目が合う。
胸がキュン、となった。
好き。
こんな単純な言葉なのに…。
横では、早苗と玲が何か話している。
そして話を終えたら、中川の所へ向かっていった。
何…?
中川と少し話をしてる。
何を話してるか聞こえない。
すると玲と早苗は中川を連れてこっちに来た。
「はいっ、優音!」
玲がにこにこ笑っている。
早苗は私に耳打ちした。
「呼び出すの嫌って言ってたけど、もうしょーがないから連れてきた」
つまり、告白のチャンスを作ってくれたんだよね。
周りには、誰もいない。
ありがとう、玲、早苗。
あたし頑張る…。
