「えぇっ、前田も考えてよ〜」
志織に言われて、前田くんは少し困ったような顔をした。
困ったような顔といっても、眉毛を曲げたり、目を細めたりじゃなくて、ほんの少しだけ、雰囲気だけ変わるといった感じだ。
「…」
「ねぇっ、何か反応してよっ」
志織は少しイライラしてるみたいだ。
声がそんな感じ。
「……」
前田くんは下を向いてしまった。
「ねぇってばー」
「ま、まぁ志織…」
志織をなだめようとしたら、前田くんが口を開いた。
「…しりとりとか」
「…しりとり……」
私は笑いそうになるのをこらえた。
だって、しりとりって、そんなかわいらしい…。
あんなに黙り込んで、しりとり…。
志織と2人で肩を震わせる。
「なんで笑う」
前田くんはよくわからないといった顔をしている。
「ぷはっ」
志織はついに吹いてしまった。
「ふっ、わは、あはははははっ」
私も志織につられて笑う。
「…なんで……」
前田くんだけ困っている。
「はぁ……落ち着いた。うん、いいよ。しりとりにしよっか。ふふ」
志織は落ち着いたと言いながら、最後に笑いをこぼした。
「……?」
前田くんだけ納得してない顔をしていたが、私たちのクラスは風船ゲーム、伝言ゲームの絵バージョン(名付けで伝絵ゲーム゙)、しりとりに決まった。
