私はお気に入りの本をとって、席についた。

前、借りたことあって気に入った本。

本というか、詩がたくさん書いてあるもの。

ぱらぱら…

ちょっと読み返してみる。

うん。やっぱいい。


「あ、それ」

顔を上げると、前田くんが少し驚いた顔をしていた。

「それ、市川が持ってきたんだ」

「え?これ?」

「うん。俺それ好きなんだ」

前田くんが、少し優しい顔をした。

「そうなんだ。あたしもこれお気に入りなの」

「へぇ…」

一瞬笑った気がした。

でもすぐ、無表情の冷たい顔に戻った。

「じゃあ他の探してくる」

そう言って、本棚のほうへ行ってしまった。


なんなんだろう。

少しだけ、優しく笑ったのに。


不思議な人だ。