中学二年生の中頃、高校受験があるということで、私はスナックの出勤日を月・水・金だけにしてもらった。


するとどうだろう。私の出ていない火・木・土の売上が大きく落ちたのである。

私のいない火・木・土にお客様が来なくなったのだ。

人数のかなり少ない店ではあるが、私はナンバーワンになっていた。

みんな私を必要としてくれているようで嬉しかった。

そんなある日、また私に会いに来てくれたお客様がいた。


滝川息子だ。中学生が一人で来た。

彼はウーロン茶を頼んだ。


「真理子ちゃんも何か飲んで」


と言った。私はうなずきオレンジジュースをもらった。


「おやじ来てないかなと思って来たんやけど…おらんなぁ」

と息子は言った。

私は

「お父さんがどうかしたの?」

と聞くと、

「べつにー」

と言われた。( 父親を探しにきたということを理由に、スナックに来たことにしたいのだろう )

それにしても中学生が一人でスナックは浮いている。

彼もそれを察して、

「帰るわ。いくら?」

と聞いた。

わずか五分かそこらでソフトドリンク二杯の中学生からお金は取れない。

母が

「お父さんからもらっとくからいいよ」

と言った。

滝川息子は素直に

「ありがとございます」

と言い店を出た。

私も送り出しをする為に店を出た。

「今日はありがと。嬉しかった」

この言葉は私の本心でもあり、夜の女として男をおとすための台詞でもあった。

しばらくの沈黙の後
彼は

「やりたい」

と言った。