すっきりした。

 サヤは、晴れ晴れと深呼吸する。

 やっとあの精霊の正体が、『グレムリン』だと思い出したのだ。

 先進国を中心に潜んでいる、機械の精霊。

 一度グレムリンに目をつけられると、計器が故障や誤動作を起こし、場合によっては破壊されてしまうこともあるらしい。

 インドでも、大都会から少し離れたところに住んでいたサヤには、無縁すぎる精霊だったために、思い出すのに時間がかかってしまった。

 日本にいる頃、兄から話だけ聞いたことがあったのだ。

 兄が苦手とする、近代の精霊の話として。

 そう、近代の精霊はとても扱いが難しいのだ。

 人間が進化するように、彼らもまた進化した精霊だった。

 情緒にとぼしく、自然のサイクルからも足を踏み外している。
 存在理由も不明のまま、突如として現れ、還るところもなく突如として消えていく。

 恨みも妬みもない、ただのお騒がせ精霊。

 前に会った九十九神とは逆の、使い捨て世代の霊だ。